幼馴染みと、恋とか愛とか
七年前のあの夜、私を抱き締めて胸を撫で回したイヤらしい人。

現在は多分五十代後半で、奥様と思われる女性の他に、娘さんとお孫さんと思われる親子と一緒に寛いでた。

大きな木の下にレジャーシートを敷き、まだやっと歩き始めたばかりのお孫さんを一生懸命励ましてる。

一見すると実に微笑ましい感じなのに、あの人はあの頃と何も変わってなかった。


それは、奥様達が揃ってシートを離れた時だ。
急にいそいそと視線を周囲に向けだし、若い女性の姿ばかりを追いかける。

こんな場所でも若い人が気になるのかと呆れるくらいの執拗さで、ターゲットを決めてはじっと見入ってる始末。

そんなのを目撃してしまうと気分が最高に悪くなってしまい、隣にいる紫苑にも私の不穏な様子が分かるくらいに動揺した。



「なんだ?どうした?」


私が急に青ざめて無口になったのを感じ取ったんだろう。
こっちは視線を堀田さんに向け、「会いたくない人がいる」と囁いた。


紫苑は視線を辿り、大きな楠の下にいる彼を見遣る。
「あのおっさん?」と呟き、私は背中を向けたままでこくっと頷いた。


< 194 / 221 >

この作品をシェア

pagetop