幼馴染みと、恋とか愛とか
「誰だ」


拷問のような質問に胸を痛めつつも「支店長」と短く答える。
紫苑は「何処の…」と声を出しかけて、ハッとした様子で「あいつか!?」と顔を覗き込んだ。



「ん…」


認めたくないが間違いもない。
あのイヤらしい獣みたいな目つきを、私は忘れたことなんてなかったんだから。


「ぶん殴ってきてやる!」


急いで立ち上がろうとする紫苑のシャツを引っ張る。
私のことなんて、相手にしたら、もう忘れてることかもしれない。


「離せ!」


怒るように睨む紫苑。
そんな顔されると余計に傷付く。


「いいよ、もう何もしないでおいて。今日は家族も一緒みたいだから」


紫苑の手を汚す様なことはさせたくない。
私にしても、ただ胸を触られただけで済んでるんだ。


「気分悪いな。帰るぞ」


来るんじゃなかった…とボヤきながら歩きだす。

私は足がもつれそうになりながらも紫苑の後を追いかけ、駐車場に停めてある車までなんとか辿り着いた。



「此処にはもう来ないようにしよう」


大事な思い出が汚されると理由を話す。

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