幼馴染みと、恋とか愛とか
私はそれを聞きながら、なんだか自分までもが汚されてる様な気がして、ぎゅっと唇を噛み締めた。


車内に乗り込むとエンジンをかける紫苑。
その横顔を見ることも出来ず、私はただ俯くばかり。

ようやく少しだけ未来が明るく見えてきたのに、再び暗黒の中に引きずり込まれてしまったみたい。

このまま部屋に戻ったら落ち込んで、きっと夕食を作る気分にもなれない。

そうなると、折角昨夜のうちから準備しておいたチキンピラフさえも役に立たない__。


惜しいな…と思うが、このまま実家に帰りたい気分だ。
あのマンションで紫苑と二人きりになるなんて、今の私には耐えれない。


紫苑の手が触れる場所に自分がいるのが嫌だ。
今も許されるなら、この車から逃げ出したい感じだ。


早く発進して…と胸の中で祈った。
なのに、紫苑はいつまで経っても動かそうとしない。

ぎゅっとハンドルを握ったまま何かを考え込んでるみたいで、私はその様子を見ることも出来ずに項垂れていた__。



「くそっ!」


悔しそうに声を上げる紫苑が、バン!バン!とハンドルを叩きだし、私はびくりと体を仰け反らす。


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