幼馴染みと、恋とか愛とか
「し…おん……」


こんな私の為に泣いてくれなくていい。
汚された様な私の為に謝ってくれなくていい。

無理しなくてもいい。
一緒に住まなくてもいいから。


ぐっと涙を堪えるように息を止める。
紫苑は私の体から腕を緩めて離れ、後頭部を撫でた。

左手が頬に伝う涙を拭う。

それから……


「キス…したい…」


そう言うと了解も得ずに唇を奪った。
ビクッと背中を伸ばす私の体を紫苑の腕が優しく抱き締めてくる。


時々離しては唇を吸う。
こっちの息遣いが荒くなっても構わず、優しく体を抱いたままキスをし続けた。


不思議と嫌だとは思わなかった。

紫苑の体温が唇を通して感じられて、怖さよりも安心感が増して、それからどんどんドキドキして___



「……昔の俺からしたら、今のこの状態は笑える」


急に唇を離した紫苑が呟く。
ぼうっとしたまま彼を見て、どういう意味だろうと窺ってた。


「結婚しようと言ったのも嘘みたいな気分だったが、それくらいやっぱり萌音が愛しい」


うっとりと見つめる紫苑の目には私が写っていて。
それを確認すると胸がきゅうっと苦しくなった。


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