幼馴染みと、恋とか愛とか
ニートになるよりかはマシだと思おう…と自分に言い聞かせ、きちんと立ち上がって頭を下げた。



「ああ、まあ頑張れば」


…って、紫苑がとっても偉そうなんですけど!?


グルル…と噛み付きたくなるのを堪え、我慢我慢…と自分を宥める。

何かと癪に触る採用の仕方ではあるけど、紫苑のおかげで何度も面接試験を受けに行く手間だけは省けたんだ。だから、少しは自分も素直になって、お礼の一言でも言おうかな…と思ったんだけど。


「ああそうだ。萌音と俺が幼馴染みというのはオフィスでは内緒な。これでも俺、社内では結構モテる方だから」


下らない自慢をしてくる時点でお礼を言うのは却下。


「誰がそんなこと言うもんですか!」


呆れる〜!と声を上げると、立ち上がった紫苑はポン!と頭の上に手を置いた。



「頼むぞ」


そう言う顔つきと声はちゃんとした社長風で、初めて見るその表情に、私の心臓はドキッ!と音を立てて跳ね上がった。


「は…はい」


つい部下っぽく返事をしてしまい、それを笑う紫苑の顔がいつもよりひどく大人っぽく見える。


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