幼馴染みと、恋とか愛とか
二十代ギリの崖っぷちな自分なんてお呼びでもないような言い方に、「ええ」と肩を落としながら同調する。


「それで社長にご相談を?」


ニコニコしながら柴原さんは聞き返してきて、私は頬を引き攣らせつつも「はいまあ」と首を縦に振った。


「し…社長さんには以前から『何かあれば言ってきて欲しい』と言われてたので」


「紫苑」とさっきから呼びそうになり、慌てて「社長」と言い直す。
「何かあれば…」と言ってたのも本当は彼の両親で、紫苑自身が私にそんな言葉を言ってくれたことは一度もない。



(嘘だらけだな。ごめんなさい)


胸の中で頭を下げていると、柴原さんはやけに感心した様な顔つきに変わり……。


「お優しい社長なら言われそうなことですね」


(へ?優しい?)


誰が…と眉間にシワを寄せながら耳を疑い、紫苑が!?と声を上げそうになる。
何処が!?と詰問しそうになって、彼女を問い質したところで仕様がない…と思い直した。


「ええ、まあ」


愛想笑いをして受け流し、これまでの過去を思い返す。


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