幼馴染みと、恋とか愛とか
「萌音の実力を考慮して決めたんだが」


サラリと言い返す紫苑の雰囲気は社長と言うよりかは幼馴染みみたいで、私はつい自分も同様な気分で「はあ?」と声を上げた。


「私は派遣でも秘書の仕事はしたことがないよ」


丁寧語も吹っ飛び、さすがに自分でも呆れる。


「したことがなくても出来るだろ。俺の仕事はほぼ情報処理みたいな感じだから」


付け加えて最近では外へ出回ることが多くなって困っていた…と言いだす。


「誰か信頼できる人間に俺の仕事を代わりにして貰いたいと思ってたんだ」


そこに私が無職だと聞かされた。
派遣先での仕事ぶりを両親達からも聞かされたことがあるらしく、使えるかも…と思ったんだそうだ。


「そんな適当過ぎない!?」


いい加減だ…と責めると「そうでもない」と自信たっぷりに言ってくる。


「俺は萌音のことを小さい頃から知ってるんだ。萌音なら俺の仕事が代わって出来る筈だ」


「どういう自信よ、それ」


そこまで信頼されてるというのも薄ら寒い。
両腕を交差して二の腕を撫でる仕草を見せると、紫苑は「まあつべこべ言わずに働け」と言いだした。


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