幼馴染みと、恋とか愛とか
まあ幼い頃は、少なくとも手の掛かる妹みたいなもんだと思ってた筈なんだ。
その気持ちに今もそう変わりはないんだが。


(あいつ、顔も高校生の頃とそんな変わってねえし、精神年齢も子供の頃のままなんだけどな)


三十路手前なのに相変わらず手に負えないことがあると頼ってくる萌音を思い、(付き合ってる男とかいねえのかな…)と考えた。


だけど、どうしていきなりそこを気にする?と自分に疑問を投げ掛け、思考を遮るように、視界に映る車窓の景色に目を向けた__。


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外回りを終えてオフィスに戻り、社長室のドアレバーに手を掛けたのは午後十二時半。
萌音は昼食休憩に行っただろうか…と思いつつドアを開けると、ふわりと香ばしい匂いが漂ってきた。


「ん?」


スン…と鼻の奥に吸い込み、なんだ?と目線を壁際に走らせる。
窓際にはベージュのスーツを着た萌音が立っていて、手には白いコーヒーカップを持っていた。


「あ、おかえり」


自宅にでも帰ってきた様な雰囲気で迎え入れられ、面食らいながら「ただいま」と言ってしまう。


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