幼馴染みと、恋とか愛とか
昔から何かと口達者な紫苑のことだ。
きっと上手に蓮也を説き伏せてくれることだろう。


「上手くいったら焼肉でも奢ろうかなぁ」



退職金もないのにそんなことを考えた。
この時の私は、まだ何も知らなかったんだ__。


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翌朝八時、のんびりと朝食を摂っていると、ピンポーンと玄関のインターホンが鳴った。
母は「回覧板かしら」と言って立ち上がり、いそいそと玄関に向かって走る。

そんな母の背中を見送ることもなく、私は大口を開けてフレンチトーストをパクつき、テレビ画面に映し出された占いのコーナーを観ていた。


玄関のドアを開けた思われる母が、驚いた様に「あら!」と語尾を跳ね上げるのが聞こえた。
それから嬉しそうに「いらっしゃい」と声を上げ、「どうぞ中へ」と招き入れている。

そんな言葉を右から左に聞き流しながら、私は自分の星座が何位かを食い入るように見つめていた。


『今日のアンラッキー星座はごめんなさい、乙女座のあなたです』


アナウンサーの声にガーン!とショックを受けてたら、母の足音と同時にもう一人分の足音がした。

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