幼馴染みと、恋とか愛とか
ふふっと笑う声にゾクリとして、いいえ…と必死に首を振る。


首藤さんは詰まらなさそうに「そう」と呟き返し、手元に届いたカクテルを一口飲んでからこう続けた。


「僕は社長が羨ましくて」


グラスを置くと目を細めるようにして私を見つめ、「三橋さんの様な美人と毎日二人だけで仕事が出来るから」と囁く。



「へ…?」


思わず目を点にした。
自分が美人だと対面して言われたのは初めてだし、正直そんな風に言われると少し薄ら寒い気分もしていた。


「別に美人じゃないですよ、私」


気のせいだと笑うと、「そんなことありません!」と食い入る様に見つめてくる。


流石にじっと見入られると焦る気持ちも湧いて、それを誤魔化すようにゴクゴクとウーロンハイを飲み込んだ。



「意外とイケる口みたいですね」


強めなカクテルでも一杯如何ですか?と問われ、「結構です」と断ったんだけど、首藤さんは私の声なんて無視して、カウンター内に立つボーイさんにスクリュードライバーを注文してしまう。


呆れ顔で横顔を見てると不敵な笑みを浮かべていて、何だか寒気に似た思いが湧いてきてしまい……。


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