幼馴染みと、恋とか愛とか
落ち着くから…と言われてグラスに入った透明な液体を見つめる。

色の付いてないグラスの中身を見ると変に泣きだしそうになり、それを隠すように俯き、グラスを傾けると勢いよく飲み干した。



トン!と置くと紫苑がこっちを見ている。
私は普段通りに振舞って、強気に「何よ」と言い返した。


「別に。顔色良くなったな」


まるで私の悪寒や気味の悪さを知ってるみたいに微笑んでくる。
いつからこっちを見てたのかは知らないけど、グッドなタイミングで現れたのは確かだ。


「しっかり飲んで食べたか?」


自分の分のミネラルウォーターを飲みながら訊ねる紫苑に頷く。
彼は「そうか。ならお開きにするか」と納得して、カウンターチェアを回すとテーブルの方へ向き直り、「帰るぞ」と社員達に言いだした。



「ええ~、もうっ!?」

「早いですよー」


口々に驚きと残念そうな声が上がる。それに対して紫苑は「プライベートで飲み続けたければ飲んでもいい」と伝えた。


「その代わり、酒代は自分達で払えよ」


ブーイングは受け付けないと笑い、社員達はブツブツと文句を呟きながらも渋々席を立ち始める。

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