幼馴染みと、恋とか愛とか

「萌音、この資料の直しを頼む。それからこっちのグラフ作成は午後三時までに仕上げて」


次から次へと仕事を手渡される。

紫苑はパソコンを操作しながら時々掛かってくる外部からの電話にも出て、どうにかすると会話をしながらメモを取り、キーボードまでも操作する。


（マルチなんだ…）


そういう姿を目の当たりにすると、紫苑が起業できた理由も分かるような気がしてくる。


先週末に話を聞けば、紫苑は大学卒業と同時にプログラマーではなくシステムエンジニアとして働きだしたらしく、いろんなオフィスや企業に出向しながら地道にソフトウエア開発を続けてきたそうなんだ。


出向中の企業からは、急にホームページ作成を依頼されたり、既存のソフトウエアのメンテナンスして欲しいと頼まれたりして、それらを全部安請け合いして担ってるうちに、自分が会社に雇われてるのが馬鹿らしくなってきたんだとか。


「朝から晩まで働いてもサラリーなんてたかが知れてる。安月給で人に雇われるくらいなら自分で起業してやろうと思った」