幼馴染みと、恋とか愛とか
母はニコニコしながら「インスタントでごめんね」と言い、コーヒーカップを紫苑の前に差し出す。

紫苑は紫苑で「いいえ」と答え、母に爽やかな笑顔を見せて「すみません」と頭を下げた。


(なんとまあ、これがあのやんちゃだった紫苑?)


子供の頃を思い出し、内心クスクスと笑いそうになりながら、カフェオレのカップを手に持って飲む。

両親は紫苑に「お父さんやお母さんはお元気かい?」と訊ね、紫苑はそれに笑みを浮かべて「はい」と歯切れのいい返事を返していた。


「実は昨日聞いたんですが、今度蓮也が情報系の専門学校に行くとか」


時間が惜しいと思ったのか、紫苑はいきなり本題に入った。
それを聞いて私はピクッと耳を動かし、両親は揃って「そうなんだよ」と首を縦に振っている。


「なんでもセキュリティエンジニアになる為の勉強をしたいらしくてね、恩師に紹介された専門学校への編入を決めてしまったんだよ」


父は向学心に溢れる息子が自慢なように話し、紫苑もそれを否定することもなく、ほう…といった感じで頷く。

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