幼馴染みと、恋とか愛とか
紫苑の両肩が上がってる。
それは機嫌のいい証拠だ。


(こういう細かい部分が分かるのもどうなんだか)


だから幼馴染みというのはやり難い。
でも、気は遣わないで済む。


(だから、あんな爆弾発言を二度と言わねいでよ、紫苑)


歓迎会以来、爆弾発言は聞いてない。
あれはやっぱり酔った上での戯言で冗談だったんだ…とホッとしてたんだけど___

_______________



「俺の女になれば?」


もぐっとミートボールを噛み締めた途端、そんな言葉が聞こえた。
ビクッと一瞬固まり、空耳?と目を瞬きさせたが。


「聞こえたか?萌音」


室内の中央に鎮座する紫苑がじっとこっちを見てる。
右手には箸を持ち、観察するような眼差しで。


「何か言った?」


念の為、惚けて訊いてみた。
きっと空耳に違いないと思いながら。


目を向けた紫苑は私の言葉を聞くと唖然とした表情を見せる。それから私の作ったお弁当の中身を少しだけ見返し、再び目線を上に向けた。


「…だから、俺の女にならないか?」


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