幼馴染みと、恋とか愛とか
私はそれを聞きながら(うへぇー)と思い、早く止めて欲しいな…と、ちらりと横目で紫苑の顔を拝んだ。


「いいことですね、大学だけでなく専門分野の勉強もしようだなんて」


止めるどころかまるで賛成のような声を返し、私はガクッと項垂れそうになる。

思わず唖然としてカップを持ったまま動きが停止し、そんな私の方へ視線を流した紫苑が、ニヤリと軽く微笑むのが見えた。


(…そうか、もしかすると最初は相手を油断させる為に同調してるだけなのかも) 


一旦受け止めてから反論を述べるつもりなんだ。
そうか、やるじゃん!と勝手に納得してしまい、皿の上に残っているフレンチトーストの欠片を摘み上げる。


たっぷりと掛けたハチミツがこぼれ落ちないように気をつけて口に運ぼうとするタイミングで、紫苑が両親に向かって話し始めた。


「しかし、大学卒業の後で専門学校へ編入となると、学費の方はどうされるおつもりですか?」


よしキター!とトーストを口に放り込みながら脳内でガッツポーズを決め、さすが紫苑!とパチパチと拍手を送りたくなった。


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