幼馴染みと、恋とか愛とか
ピッチは社長室に置いてきてしまってるし、首藤さんの目の前で紫苑に電話をかけることなど出来ないし。


そもそも首藤さんは強烈に私を見つめていて、その眼差しから視線を逸らすのも怖くて。



「お弁当は…」


作るのはやめます…と言うのは簡単だけど、それだと紫苑がガッカリするかもと思うと口にも出せない。


(あんな変な発言する人なのに)


兄みたいに思えと言われてきたのに。
今みたいに困ってると不意に現れて問題を解決してくれてたのに。


(こういう時は来ないっていうのはどういうの!?だから、紫苑は私の思い通りには動かないって思うのよ!)


肝心なところで意地が悪いと思ってしまう。
思惑通りにならないから紫苑をどうしても悪く思っちゃう。


冷や汗をかいたまま首藤さんを見続けていた。
目が血走ってるように見えるのは多分私の気のせいで、そこまで緊迫する様な雰囲気ではないと思うんだけど。


「……その件については、社長と相談した方がいいと思います」


話を切るように言いだしたのは首藤さんだ。
私はほうっ…と息を吐きそうになり、「そ、そうですね」と肩を竦ませて返事した。

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