幼馴染みと、恋とか愛とか
あれは夏が過ぎて秋に移行した頃だった。
勤めていた銀行の裏口から退勤して、バス停に向かおうとしていたところを呼び止められた。
『あの……三橋さん…』
振り向くとそこにはあの人がいて、思い詰めるように私にこう言ったんだ……。
『僕は…君を独占したいんです』
眼鏡の奥の瞳は異様なまでに光ってて、私は怖くなって逃げ出した。
幸いにも相手は後を付けてくることもなく、ホッと胸を撫で下ろしたんだが………。
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ふと顔を上げると社長室だった。
ついうっかり寝てしまったんだと分かり、慌ててパソコンを起動させる。
いくら紫苑が休めと言ったからって、寝てしまうなんてどうかしてる。
しかも、あんな嫌な思い出を夢見るなんて、忘れてしまおうと必死で何年も苦労したのに……。
「はぁ……」
大きな息を吸ったり吐いたり。
自分を落ち着けてからでないと、紫苑に任されてる仕事が出来そうにもない。
(あれを夢見るなんて最悪。きっと、さっき首藤さんに絡まれたからだ……)