幼馴染みと、恋とか愛とか
彼の雰囲気があの人に似ていた。
顔も体つきも違うのに、どうしてか裏にあるものが同じように感じてしまった。


(もう思い出さないでいよう。余計な勘繰りもしないで集中集中)


じっと食い入るようにディスプレーを見つめる。

高校や大学時代に取った資格のおかげで、今私はこうして何とか働いてるけど、最初に就いた銀行では、殆どパソコンを扱うことはなかった。

窓口業務ばかりをさせられて、それが嫌で嫌で堪らなかった。



(ほらまた思い出してる)


自分を指摘して止める。
思い出さないと決めたんだから、考えないようにするんだ__。



………その日は結局、紫苑は出かけたまま社長室には戻ってこなかった。

私は定時になると帰っていいことになっていて、取りあえず頼まれた仕事が一段落着いたところで腰を上げた。



(どうか首藤さんがいませんように……)


エンジニアの彼は多分毎日私よりも帰りが遅い。
退勤時間が重なったこともないし、ピルの外で出会ったこともない。


明らかにあの時とは違うんだけど、薄気味の悪さが頭から離れていかなかった……。


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