REARLIGHT TEARS
彼女が住んでいるマンションはリゾート開発公団が管理する美咲の森国定公園の最南端に位置した入江の高台に面しており、そこから見下ろせるロケーションの美しさは国内でも有数の観光地のひとつとして知られている…
真新しい国道に照葉が涼しげな陰を描く中、その長い上り坂の途中にある真っ赤な歩道橋から2つ手前の信号を過ぎた路側帯で僕は、パーキングブレーキを引いた。
「朝食だけでも一緒にどうかしら…?」
「僕は君の彼氏じゃないから、ここで失礼するよ」
「私って、そんなに魅力ないかなぁ…?」
不機嫌さに、茶化す様な仕草をブレンドした独特な甘えのスタイルは顕在の様だ。
「君を失わない為のルール…今以上を求めなければ、それ以下にもならないだろ?」
「彼とは違って…でしょ」
彼女は初めて満面の笑みを浮かべた。
ドアを開けた彼女が車から降りると素早く運転席へと駆け寄り、窓越しに立つと、
「でもそれは、いづれ私と会う唯一の口実を失くす事にはならないかしら」
ここは理に敵う言い訳は通用しないと察知した僕は、
「このシートはいつも君の為に空けておくよ…という事にしておこうか」
助手席を軽く押さえながら微笑む僕に対し、無言で頷く彼女との僅かな距離が、サイドウインドによって隔たれていく。
するとそこへ、文字らしき何かを彼女は指で描いたのだが、読み解く事は出来なかった。
クラクションを二度鳴らし走り去る車に向かい、小さく手を振る彼女がバックミラーの中で消えていくまでの間、僕はずっとその姿を追い続けていた…
車は再開発の進む都心部を抜け、首都圏へと入っていた。
都会の空が白く明けていく中、都心高速の案内ランプを通過した辺りで聞き慣れた着信音がモーニングコールの受信を知らせる。
「本当に…色々と、ありがとう」
彼女の声が受話器の向こうで涙ぐんでいる…
僕は “その声” を、オーディオから流れてくる美しいフレーズにそっと近付けた…
「この曲は『リアライト・ティアス』と言ってね、大切に想う人を永遠に守ってあげたい…という願いから作られた曲なんだ」
「それって私に対しての愛情なの?それとも友情?」
「両方だろうね」
真新しい国道に照葉が涼しげな陰を描く中、その長い上り坂の途中にある真っ赤な歩道橋から2つ手前の信号を過ぎた路側帯で僕は、パーキングブレーキを引いた。
「朝食だけでも一緒にどうかしら…?」
「僕は君の彼氏じゃないから、ここで失礼するよ」
「私って、そんなに魅力ないかなぁ…?」
不機嫌さに、茶化す様な仕草をブレンドした独特な甘えのスタイルは顕在の様だ。
「君を失わない為のルール…今以上を求めなければ、それ以下にもならないだろ?」
「彼とは違って…でしょ」
彼女は初めて満面の笑みを浮かべた。
ドアを開けた彼女が車から降りると素早く運転席へと駆け寄り、窓越しに立つと、
「でもそれは、いづれ私と会う唯一の口実を失くす事にはならないかしら」
ここは理に敵う言い訳は通用しないと察知した僕は、
「このシートはいつも君の為に空けておくよ…という事にしておこうか」
助手席を軽く押さえながら微笑む僕に対し、無言で頷く彼女との僅かな距離が、サイドウインドによって隔たれていく。
するとそこへ、文字らしき何かを彼女は指で描いたのだが、読み解く事は出来なかった。
クラクションを二度鳴らし走り去る車に向かい、小さく手を振る彼女がバックミラーの中で消えていくまでの間、僕はずっとその姿を追い続けていた…
車は再開発の進む都心部を抜け、首都圏へと入っていた。
都会の空が白く明けていく中、都心高速の案内ランプを通過した辺りで聞き慣れた着信音がモーニングコールの受信を知らせる。
「本当に…色々と、ありがとう」
彼女の声が受話器の向こうで涙ぐんでいる…
僕は “その声” を、オーディオから流れてくる美しいフレーズにそっと近付けた…
「この曲は『リアライト・ティアス』と言ってね、大切に想う人を永遠に守ってあげたい…という願いから作られた曲なんだ」
「それって私に対しての愛情なの?それとも友情?」
「両方だろうね」