溺愛本能 オオカミ御曹司の独占欲には抗えない
私に手を振る彼女に、あたふたしながら「はい、お疲れ様でした」と声をかける。

遥を責めるのに夢中で一瞬可憐さんの存在を忘れてたよ。

ごめんなさい。

それにしても、彼が『また後で』って言ったのは、ここで合流するつもりだったのか。

頰の熱も引いてきて少し冷静さを取り戻した私。

「ねえ、なんで私のこと『婚約者』なんてみんなに言いふらしてるの?」

静かな怒りをみなぎらせながら問い詰めるが、遥は平然とした様子で理由を語る。

「お前の世間体もあるだろ?俺の愛人扱いされる方がいいか?」

「それは嫌」

間髪置かずに答える。

やっぱりそんな理由か。

心配して損した。私、翔太君にからかわれたんだな。

「それに、お前が俺の婚約者ってことにしておいた方が俺としても都合がいい。三十過ぎると、親も結婚しろってうるさいんだよ。婚約なら戸籍にも傷がつかないし、いつ解消したっていいだろ?」
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