溺愛本能 オオカミ御曹司の独占欲には抗えない
なるほど。

婚約ということにしておけばいろいろ便利なわけだ。

私に餌を与えて、自分は独身貴族を謳歌する。

今日の豪華なお持てなしはそういうことなのだろう。

「つまり、私は遥に利用されるわけね」

溜め息交じりの声で言いながらも、もう反論はしなかった。

それこそ、遥らしくて安心だ。

ただほど高いものはないって言うし。

「お前は住むとこと仕事を手に入れる。俺は自由を手に入れる。ウィンウィンの関係だ」

遥は悪魔な顔で微笑する。

「はいはい。わかりました。ウィンウィンの関係ね」

サバサバした気分で相槌を打てば、遥に「楓、帰るぞ」とポンと肩を叩かれた。

『帰る』かあ。

その言葉に段々違和感がなくなってきている自分が怖い。

実際、遥のマンション、住み心地がいいんだよね。

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