溺愛本能 オオカミ御曹司の独占欲には抗えない
彼女が変な妄想を抱きそうなので、すぐに訂正した。

「まあ、そういうことにしておこうか。ねえ、成瀬先輩のマンションってどんな感じ?」

興味深々で尋ねてくる彼女に、あの豪華なマンションのことを話して聞かせていたら、不意に声をかけられた。

「……楓?」

それは、忘れかけていた佐倉先輩の声。

気づけば数メートル先にいて、連れの人と帰るところのようだった。

彼を見て瞬時に身体が強張る。

「……こんばんは」

他人行儀にそう挨拶するが、彼はそのまま店を出てくれない。

同僚らしき連れの男性に「ちょっと先に行ってて」と声をかけ、私に向き直った。

「話せないかな?」

先輩は、私をメガネ越しに見る。

「友達と一緒なので」

素っ気なく言って断るが、彼はわかってくれず、私の手を握って必死な声で告げる。

「楓のこと諦めきれないんだ!」
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