溺愛本能 オオカミ御曹司の独占欲には抗えない
「もう終わったことです」

冷たく言い返すと、佐倉先輩は声を荒げた。

「終わってない!」

周囲のテーブルに座っている人もその声に驚いて私達に目を向ける。

「落ち着いて下さい」

美桜が困惑顔で先輩に声をかけるが、彼は構わずもう一度言った。

「俺達は終わってなんかいない」

お酒を飲んで酔っ払っているのか、いつもの穏やかな彼らしくない。

……困った。

どう言えば納得してくれるのだろう。

戸惑いながら佐倉先輩を見ていたら、背後から声がした。

「楓、帰るぞ」

その声に反応して振り返れば、コツン、コツンと靴音を響かせながら、遥がやって来る。

その姿を見て、ホッと胸を撫で下ろした。

いいタイミングで来てくれた。

「遥」

名前を呼んだら目が合ったが、彼はすぐに佐倉先輩の方を見た。

「俺の婚約者に何か?」

紳士スマイルで尋ねる遥。
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