溺愛本能 オオカミ御曹司の独占欲には抗えない
ハーッと溜め息をつきながら上のシャツを着る。

「ほら、着たぞ」

彼女に声をかけると、指の隙間から様子を窺い、俺がシャツを着ているのを確認してその手を下ろした。

「もう、いつも服着ててよね。目のやり場に困る」

「自分の家だ。自由にするさ。お前が慣れろ」

傲慢な言葉を返せば、『居候』という立場を思い出したのか、楓はそれ以上反論せずに調理を続ける。

そして、まな板の魚の切り身に自分の怒りをぶつけていた。

その姿を見て苦笑する。

「お前、その魚、俺と思って切り刻んでるだろ?」



「ちょっと楓借りるぞ」

次の週、午後三時過ぎにデスクにいる翔太の肩をポンと叩いた。

「ああ。例のやつですね。どうぞ」

こいつは俺の方を振り返り、にこやかに応じる。

一方、楓はポカンとした顔で俺に聞いてきた。
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