溺愛本能 オオカミ御曹司の独占欲には抗えない
「例のやつって何?」

「質問はいいから、早く帰り支度をしろ」

深く追及されると面倒なので、冷淡に言って彼女を急かす。

「社長、横暴すぎやしませんか?」

彼女はわざと俺を役職名で呼んで、チクリと嫌味を言う。

先週車の中でキスしてから、事あるごとに楓に触れスキンシップを増やしてきた。

俺に触れられて赤面することはあっても、驚くことはなくなった。

キスしたら怒るのは相変わらずだが、今のところ俺たちの関係は良好。

恋人ではないが、それはお互いの意識次第だと思う。

最近、よく楓の視線を感じるし、俺と目が合うと彼女は”マズイ”って顔をしてすぐに目を逸らすのだ。

「嫌なら辞めてもいいが?」

そんな脅し文句を口にすれば、楓は悔しそうに唇を噛み締めた。

俺との約束を思い出したのだろう。

辞めたらひとり暮らしが出来ない。
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