溺愛本能 オオカミ御曹司の独占欲には抗えない
彼女は無言でPCの電源を落とし、デスクの上を片付けるとバッグを手に持った。

「準備出来ましたよ」

仏頂面で言う楓に姉貴が優しく声をかける。

「遥に綺麗にしてもらってね」

「え?『綺麗に』?」

楓は姉貴を見て首をひねると、次に俺に目を向け説目を求めた。

「まあ、シンデレラタイムかな」

謎めいた言葉を口にすれば、彼女は「はあ?」っと眉根を寄せる。

「遥、店に予約入れておいたから。運転手には場所も伝えてあるわ」

姉貴がクールな顔で報告し、腕時計をチラリと見て俺の背中をトンと叩いた。

「そろそろ行きなさい。女の支度には時間がかかるのよ」

「了解。何かあれば連絡してくれ」

姉貴に小さく頷くと、楓の手を握ってオフィスを後にし、ビルの正面玄関に横付けされた車に乗り込む。

「ねえ、どこ行くの?」

何も知らされていない楓は、少し不安そうに俺を見た。
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