溺愛本能 オオカミ御曹司の独占欲には抗えない
「ああ……なんて馬鹿なことしちゃったんだろう」

思わず溜め息と共に言葉が出る。

“後悔先に立たず”だ。

タイムマシンがあったら、過去の自分に注意してやりたい。

ああ……現実逃避している場合じゃない。

遥は今シャワーを浴びている。

逃げ出すなら今だ。

このまま顔なんて合わせられないよ。

床に落ちている下着と服を拾い集め、素早く身につけようとするが焦って上手くいかない。

“落ち着け、落ち着くんだ”。

自分にそう言い聞かせ、彼のシャワーの音を気にしながらもなんとか服を着るが、一足千円で買ったストッキングは力が入りすぎて破いてしまった。

それをここのゴミ箱に入れるのは気が引けて、バッグを見つけると、無造作に中に突っ込む。

そして、忍び足で寝室を出ると、長い廊下を歩いて玄関に行き、彼の家を飛び出した。

心臓はバクバク。
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