溺愛本能 オオカミ御曹司の独占欲には抗えない
「さあ。昔のことは忘れたよ」

謎めいた微笑を浮かべ惚ける修也。

「お前の兄貴も聖人君子じゃないってことだ。よーく覚えておけ」

ビールを口にしながら楓に忠告すると、修也がニコニコしながら俺に脅しをかけた。

「遥、今度じっくりとふたりで話をしようね」

この場のジョークとして言ってきているが、彼の目は本気だ。

多分、俺と楓の関係に気づいているのだろう。

もう昔の三人じゃない。

誤魔化そうとしても、鋭い修也にはすぐにバレる。

だったら、いつも通りに振る舞うまでだ。

「お前、唇に青のりついてる」

そう言って、楓の唇に触れて青のりを取る。

「あっ、ありがと」

楓はサラッと礼を言って、ジンジャーエールをゴクッと飲む。

以前なら、楓が「勝手に触らないでよ」と俺に文句を言っていただろう。
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