溺愛本能 オオカミ御曹司の独占欲には抗えない
俺は冷ややかな怒りを持ってその視線を受け止めた。

そんなオス同士のやり取りに気づかない楓は、眠くなったのか欠伸をし出す。

「そろそろ帰るか」

腕時計に目をやれば、午後十時になろうとしている。

もう店も閉まる時間。

「ああ」

修也が俺の目を見て頷くと、会計を済ませて店を出る。

通りでタクシーを拾うと、彼が突然楓をギュッと抱きしめた。

「お、お兄ちゃん?どうしたの?」

修也の抱擁に戸惑う楓。

「しばらく楓に会えなかったから充電してるんだよ。今夜は楽しかった。おやすみ」

囁くように言って彼は彼女の髪にキスをする。

まるで恋人同士だ。

「楓、明日は仕事だし帰るぞ」

彼女の手を掴んで修也から離す。

我ながら大人げない……とは思うものの、これ以上ふたりがくっつくのを目にしたくなかった。
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