溺愛本能 オオカミ御曹司の独占欲には抗えない
彼女の後ろ姿を見送りながら、翔太君が軽く溜め息をつく。

「翔太君なりに心配してるんだね」

クスッと笑うと、翔太君は照れ隠しなのか、プイッと顔を逸らしながら弁解した。

「あの人に抜けられると困るからですよ」

翔太君、結構いい人じゃない。

「うん、そういうことにしておこうか」

ニヤニヤしながら言えば、翔太君は私に冷やかされるのが嫌だったのか、スタスタと先に行ってしまった。

私も早く一人前になって、珠子さんみたいに頼りにされたい。

翔太君にとっては、私はまだ試用期間中で、戦力外。

なんとか体力をつけなきゃね。

病院で診てもらった方がいいのかな。

トボトボ歩いてオフィスに戻ろうとしたら、珠子さんが息急き切って走って来た。

「あっ、楓ちゃん、ちょっとこっち」

彼女は私の手を引いて近くのトイレに連れ込むと、ゼーハー息を吐いた。
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