溺愛本能 オオカミ御曹司の独占欲には抗えない
私……彼にとって世界で一番嫌な女になるかも。

「そうですね」

自虐的に笑いながら相槌を打つ。

ひょっとしたら、ここで仕事をするのもあと数日で終わってしまうのかもしれない。

悲しさを感じながらも、自分の出来ることを全力で頑張ろうと思った。

今までお世話になった……私を元気にしてくれた社員のみんなに少しでも報いたい。

午後は何も考えないようただひたすら仕事に集中した。

忙しくしていれば何も考えずに済む。

「楓さん、時間なんでもう上がって下さい」

翔太君に突然声をかけられ、また現実に戻されたような気がした。

もう定時になっちゃったのか。

「……はい」

急に全身の力がフッと抜けて、ボーッとした頭で返事をすると、彼がそんな私を見て少し厳しい口調で言った。

「あとタクシーで帰って下さい。もう呼んでありますから」
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