溺愛本能 オオカミ御曹司の独占欲には抗えない
気がつけば、タクシーはホテルのエントランスの前に着き、バッグの中を漁って財布を取り出して、支払いを済ませる。

ホテルの中に入ると、スマホを手に取り兄に連絡した。

ツーコールで兄が出た。

『楓?どうした?』

優しい兄の声を聞いてホッとする。

「お兄ちゃん、私……お兄ちゃんと一緒にイギリスに行っちゃダメ?」

スマホを握り、半泣きになりながら懇願する。

私の発言に驚きの声を上げる兄。

『え?急にどうした?楓、今どこにいる?』

「……お兄ちゃんの宿泊しているホテル」

か細い声でそう告げると、兄は少し焦った声で言った。

『今タクシーで移動してて……。あと十分くらいで着くと思うから、フロントの近くにあるラウンジで待ってて』

「うん」

小さく頷いて通話を終わらせると、兄に言われたようにラウンジの窓際の席に座り、やってきた店員に飲み物を注文する。
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