溺愛本能 オオカミ御曹司の独占欲には抗えない
メニューを見なくても、飲みたい……いや、飲めるメニューは決まっていた。

しばらくすると、ジンジャーエールが運ばれて来て一口口にする。

喉が刺激されて、少し気分が楽になった。

胃のムカムカもおさまる。

最近、やたらとジンジャーエールばかり飲んでいるのは、妊娠のせいなんだろうか?

グラスの中の氷を見つめていたら、兄が慌てた様子で現れた。

「楓!」

兄は私のテーブルまでやってきてハーッと息をつく。

さあて……なんて言おうか?

何も声をかけられず黙っていたら、兄が私の横に座った。

「急に俺とイギリスに行くなんてどうした?遥と喧嘩でもした?」

私の顔を心配そうに覗き込む兄に、「違う」と小声で否定する。

「じゃあ、どうして?」

優しい声音で兄は尋ねた。
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