溺愛本能 オオカミ御曹司の独占欲には抗えない
「もう……遥のマンションには住めないから」

それしか言えなかった。

「遥に出て行けって言われたの?」

「ううん」

彼はそんな冷たいことは言わない。

言わないから、私から出て行くのだ。

妊娠のことを告げたら、責任から結婚するって言うかもしれない。

私は彼の親友の妹だし、お金で解決なんかしないだろう。

でも、そんなの絶対に嫌だ。

責任から結婚なんてしてもらいたくない。

理想論かもしれないけど、結婚は愛がなきゃ嫌だ。

でも、それを遥に求めるのは無理な話。

「楓……言ってくれなきゃわからないよ」

兄が私の目を見て言う。

「……ごめんなさい。今は何も言えない」

兄から視線を逸らし、俯いた。

言ったらきっと兄は遥を責めるだろう。

でも、彼は悪くない。

悪いのは全部私だ。

「……ごめんなさい」
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