溺愛本能 オオカミ御曹司の独占欲には抗えない
兄に対して、そして……ひょっとしたらいるかもしれないお腹の赤ちゃんに謝る。

私……シングルマザーになるのかもしれない。

子供をおろしたいとは思わなかった。

遥には悪いが、好きな人の子供だもん。

命を奪うなんて出来ない。

その時、私のバッグの中のスマホがブルブルと震えた。

バッグの中のスマホに目をやれば、画面に『遥』と表示されているのが見える。

彼からの着信だ。

怖くて電話に出れずそのまま放置していたら、横に座っている兄にもその表示が見えたのか、勝手にスマホを取って通話ボタンを押した。

『楓?』

兄に注意しようとしたら、スマホから遥の声が聞こえてドキッとする。

兄がスマホを耳に当て、彼と話した。

「遥、俺だけど。……うん、楓は俺の泊まってるホテルにいるよ」

兄が私をチラリと見る。

多分、遥は私がマンションにいなかったから、電話してきたのだろう。
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