溺愛本能 オオカミ御曹司の独占欲には抗えない
待って!

……そう言えば、妊娠検査薬とか置きっ放しだ。

あれを……見られたら?

……マズイ。

私が妊娠してるかもって普通に考えるよね?

どうして片付けておかなかったの!

馬鹿な自分に呆れていたら、兄が遥に思わぬ言葉を放った。

「遥、今すぐ俺の泊まっているホテルのバーに来いよ」

その目は静かな怒りに燃えているし、口調もいつもと違う。

そんな兄を見たのは初めってだった。

遥がここに来る。

彼から逃げたくてここに来たのに……。

「なんで……お兄ちゃん?」

責めるように問えば、兄は電話をブチッと切り、優しく諭すように言う。

「逃げちゃダメだよ。遥と何かあったんだよね?あいつ、珍しく取り乱してた」

「……嘘」

兄の言葉が信じられなかった。

遥はいつだって自信に満ち溢れてて、取り乱したところなんて見たことがない。
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