溺愛本能 オオカミ御曹司の独占欲には抗えない
保養施設や単身者の寮を売却して少しでも負債を減らすつもりなのだろう。

そして、大規模なリストラ。

表向きは、私はクビではなく希望退職者になるとか。

普通ならこんな性急に事は運ばないが、今は会社の存亡に関わる事態。

他の社員も上司に呼び出されていたが、気にかける余裕もなかった。

この六年間、残業も厭わず働いてきた。

先月は終電で帰るのが普通で、残業時間も六十時間超え。

会社のために尽くしてきたのに、この仕打ち。

家に帰ると、棚から通帳を出して残高を確認した。

何度見ても五十万ちょっとしか残っていない。

六年間働いてそれしか貯めていないのには理由がある。

去年の十二月に大学の時に受けていた奨学金を一括返済したからだ。

借金をいつまでも抱えているのは嫌だったし、身軽になりたかった。

普段無駄遣いなんてしないし、夏にはボーナスも出る。
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