溺愛本能 オオカミ御曹司の独占欲には抗えない
自分が許せなくて、壁をバンと強く叩く。

もっと早く楓と向き合って話をすべきだった。

“後悔先に立たず”だ。

彼女の入院やアメリカ大統領暗殺未遂事件で、彼女に話すタイミングを失った。

……違うな。

それは、ただの言い訳。

彼女と話をするのを先に延ばしていた。

楓が俺の元から逃げるのが怖かったから。

彼女と結婚する準備は進めているのに、本人とは何も話していない。

本気で好きな相手には不器用な俺。

「どこへ行った?」

スーツのポケットからスマホを取り出し、楓にかける。

元彼に浮気された時のように無茶しないか心配だった。

俺から離れたくてここを出たのなら、出ない可能性の方が高い。

“出ろ、出ろ”と何度も念じる。

この展開、前にもあったな。

彼女はなかなか電話に出ない。

だが、辛抱強く待っていたら、電話が繋がった。
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