溺愛本能 オオカミ御曹司の独占欲には抗えない
俺がホテルに行かなければ、楓には会えない。

会わせてもらえない。

覚悟を決めて家を出て、タクシーで修也の宿泊先のホテルに向かった。

ホテルに着くと、エレベーターで最上階にあるバーへ。

薄暗いバーに入り、楓と修也の姿を探した。

すると、カウンターにいた修也が俺の方を見て軽く手をあげる。

楓は彼の横にはいなかった。

そのことに落胆してしまう。

やはり俺に会いたくない。

そういうことなのだろう。

「早かったね。道空いてた?」

ウィスキーのロックを飲みながら、普段と変わらぬ様子で話しかける修也。

それがどこか不気味だ。

「まあな。楓はお前の部屋にいるのか?」

彼女の居場所を尋ねれば、彼は「ああ」と頷いた。

修也の横に腰掛けると、彼が飲み物を聞いてくる。

「何頼む?」

酒を飲んでする話じゃないと思って「いや、いい」と断った。
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