溺愛本能 オオカミ御曹司の独占欲には抗えない
私のことなんて心配しなくていいんだよ、お兄ちゃん。

もう自分の好きなことだけ考えて生きてよ。

それが、私の心からの願い。

だから、兄に嘘をついた。

「大丈夫だよ。ちょっとボーナスの金額が減るってだけ。お兄ちゃん、私の心配なんかいいから、仕事に集中してね」

兄を安心させるために笑ってみせる。

嘘をついた罪悪感で少し胸が痛んだが、これも兄のためと自分に納得させた。

『俺は今はどうしても日本に戻れない。だから、お前のことは遥に頼んでおいた』

え?遥?

その名前を聞いて、血の気が一気に引いた。

「お、お兄ちゃん、私の話ちゃんと聞いてる?私は大丈夫だから。遥なんかに頼まなくても平気だよ」

『会社クビになって、寮も退去させられるんだよね?』

兄の言葉に絶句。

それは、質問ではなく確認だった。

な、何で海外にいるのにそんなこと知ってるの?
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