溺愛本能 オオカミ御曹司の独占欲には抗えない
そう考えると、胸がチクッと痛んだ。

ああ……何がなんだか……。

「私には全然わからない」

『喧嘩したのなら早く仲直りするんだね。あいつ、お前のこと心配してたよ』

フッと電話越しに笑って兄は電話を切る。

「ちょっ……お兄ちゃん、遥に断って!」

スマホに向かって叫ぶが、もはや兄には聞こえていない。

「……最悪だ」

顔なんて合わせられるわけがない。

こうなったら徹底的に避けよう。

あの金曜の夜の話なんかされたらたまったものではない。

なのに……頭も身体もあの時の遥を鮮明に記憶している。

彼の甘い声も、その優しい温もりも……って、ああ〜、考えちゃダメ!

忘れるんだ。

ただ夢を見た。

そう思えばいい。

そんなことよりも早く仕事を探して、アパート見つけなきゃ。

でないと、ホームレスになっちゃうよ。
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