溺愛本能 オオカミ御曹司の独占欲には抗えない
無常にも時間だけが過ぎていき、今はもう四月の下旬。

あと一週間でアパートを見つけるなんて無理だ。

例え見つかったとしても保証人はどうする?

追い詰められて、精神的にかなり参っていた。

有給を取ろうにも、仕事の引き継ぎがうまくいっていない。

私の後任は元彼の浮気相手の渡辺さん。

彼女は実家から通っているらしく、首切りの対象から外れたらしい。

それに、私よりも若いしね。

「引き継ぎなんていいですよ。マニュアルさえキチンと作ってくれればうまくやります。私、馬鹿じゃないんで」

そう私に毒を吐いて定時で上がる彼女。

月末にやらなければいけない仕事はたくさんある。

それをマニュアルだけ見てやるって……なんて無謀な。

小言を言ってやりたくなるが、その元気も今の私にはない。

ブルブルっとデスクの上で震える私のスマホ。
< 33 / 263 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop