溺愛本能 オオカミ御曹司の独占欲には抗えない
ラインのメッセージが入っていて、相手は佐倉先輩だった。

何度か会社の廊下で会って声をかけられたけど、構わず先輩を無視した私。

彼の顔を見ると、母を裏切った父と同じ嫌悪感を抱く。

【会って話をしたい】

今回もそのままスルーしようかと思ったがやめた。

【私は話なんかありません。渡辺さんとお幸せに】

素早くそう返すと、画面を操作して彼の連絡先を全て消去する。

これで、もう彼に私の邪魔はされない。

どうせ私が会社を辞めたら、もう会わなくなる。

胸に苦い思いが広がるも、悲しくはなかった。

他にも不幸なことが一杯あって感覚が麻痺してるのかも。

自虐的に笑って、ひとり黙々とマニュアルを作成していく。

もう辞めてしまうからといって、仕事を適当になんか出来ない。

私が辞めて業務が滞らないか心配になる。

でも、きっと私がいなくても、会社は困らないだろう。
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