溺愛本能 オオカミ御曹司の独占欲には抗えない
『悪い。今回は遥に甘えさせてもらうよ。今、大事な時なんだ。それにしても、俺が頼んだとはいえ、ずっと楓のことを気にしていたのか?』

確かに修也から楓のことを頼まれていたが、正直言ってあの夜までは彼女のことを忘れていた。

もちろん、楓が俺を頼ってきたら、いつでも助けてやったと思う。

修也の質問に、ほんの一瞬本当のことを言ってしまおうかどうか迷った。

だが、言えば余計心配させてしまう。

「いや。たまたまだ。楓にこの前偶然会って……まあ彼女の会社のこともニュースで知って気になってな」

そう言って言葉を濁す。

『ふーん、たまたま……ね』

俺の答えに引っかかりを覚えたのか、修也はそこを強調してくる。

嘘をついているわけではないが、無性に喉が渇いた。

もっと突っ込んでくるかと思ったのに、こいつは俺にいつもと変わらぬ穏やかな声で言う。


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