溺愛本能 オオカミ御曹司の独占欲には抗えない
悔しそうに唇を噛み締める彼女。

不甲斐ない自分に苛立っているのだろう。

「今はまずゆっくり休め」

今度は優しく声をかけて楓を寝かせた。

「遥……迷惑かけちゃって……ごめん」

布団で顔を覆いながら、彼女は申し訳なさそうに謝る。

あの夜のことがあるから俺の顔は正視出来ないか?

だとしたら、今あの時の話を持ち出さない方が賢明だな。

楓を益々追い詰めてしまう。

まずは体調を戻さないと。

「そう思ってるなら早く元気になれよ。お前が弱ってるといじめ甲斐がない」

フッと笑いながら言うと、彼女は布団で顔を隠したまま文句を言った。

「……何、その言い草」

「いいから、黙って寝てろ」

手を伸ばしてその頭を撫でるが、楓は憎まれ口を叩いた。

「もう頭が起きたから寝られない」

修也に言われたのならすぐに従うくせに、俺が命じると必ず逆らう。
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