溺愛本能 オオカミ御曹司の独占欲には抗えない
遥に聞こえないようボソッと毒づくが、彼にはしっかり聞こえていたようで……。

「抱いてくれって煩い女がいるからな」

“お前のことだ”と言わんばかりのその流し目。

遥の皮肉に思わず唇を噛む。

こいつ……私をいじめて楽しんでいるよね!

兎に角、四番目の約束は絶対に守れる。

遥も保護者面してるけど、本音は私を早く追い出したいのだ。

絶対に好きにならないから安心しなさいよ!

遥に向かってあっかんべーをするが、彼は涼しげな顔でスタスタと歩き始め、家の中を案内する。

「このゲストルームがお前の部屋。トイレ、バスもついてる」

彼の態度にムッとしていた私は返事はせず、ただ黙ってついていく。

ここから出て行った日は、気が動転していてじっくり眺める余裕なんかなかった。

今も緊張からか手にうっすらと汗をかいている。


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