溺愛本能 オオカミ御曹司の独占欲には抗えない
彼と抱き合ってた後輩は、いつものように定時で上がった。

『私、今日は用事あるんで帰ります。先輩は金曜の夜も残業なんてついてないですね』

後輩は私を見て笑っていた。

あれは……私を嘲笑っていたのだろう。

佐倉先輩のアパートへ行く気でいたのだ。

彼女が彼を狙っているのは知っていた。

でも、先輩ならずっと私を思っていてくれる。

そう信じていた。

彼のアパートの場所を知っているなら、かなり前からふたりは親密な関係だったのだろう。

何も知らずに残業していた私って……。

「馬鹿みたい」

ポツリと呟き、カクテルを口にする。

すると、カランコロンとドアベルが鳴って、誰かに肩をポンと叩かれた。

「楓?お前、何ひとりで飲んでるんだ?」

咎めるような口調。

良く知ったその声に身体がカッと熱くなる。
< 7 / 263 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop