溺愛本能 オオカミ御曹司の独占欲には抗えない
「あっ、また逃げられた。ひょっとして私スランプ?」

ブツブツ独り言を言っていたら、隣にいる遥がククッと肩を震わせた。

「お前、初心者なのにスランプってなんだよ。笑わすなよ」

「朝は結構いい調子で釣れてたのに、おかしい」

ジーッと魔法のルアーを見る。

「焦って早く巻き過ぎ。もっとリラックスしないと。今のお前、邪心だらけ」

遥に指摘され、今度はなるべく無心で釣りをする。

すると、魚が食いついた。

ニンマリしながらも、少し我慢。

少し余裕を持って糸を巻き上げたら、八匹目が釣れた。

「わーい、釣れた!あと二匹。遥、取って!」

横にいる遥に目を向ければ、彼は六十センチはありそうな大物と格闘中。

「楓名人、自分でやってみろ!」

遥からそう声をかけられ、自分が釣り上げた魚をじっと見た。

私に出来るだろうか?
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