溺愛本能 オオカミ御曹司の独占欲には抗えない
「お前なら池に引きずり込まれるだろうな。今まで釣った中で一番かも」

魚を見て遥は満足気な顔をするが、すぐにリリースした。

「なんかもったいない」

少し残念そうに魚を見送ると、遥がクスリと笑う。

「あんなの家で飼うわけにもいかないし、調理するのも大変だろ」

「確かに」

それから九匹目を釣り、十匹目を釣ろうと意気込んでいたら、大物がかかった。

腕が重い。

私にも釣れるかもしれない。

そう思って格闘するも、魚は必死に逃げる。

こうなったら意地だ。

遥が「手を貸そうか?」と声をかけてきたが、「大丈夫」と断る。

自分の力で釣ってやるんだから。

竿を引きながらリールを巻くが、魚は逃げ回り、せっかく巻いた糸がまた伸びていく。

池の周囲を歩いて距離を詰めようとするも、石に躓いた。

「あっ!」と叫ぶと同時に身体が傾いて、水面が迫ってくる。
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