カナリアの歌
窓の外を見れば雨の雫がパラパラと当たっている。

昨日は入学式だった。

周りの人たちは派手な人が多い。

ただ、私は目立たないようにマスクを付けて、誰とも話していない。

自分の声を、出すのが嫌だから。極力話したくない。



でも、やりたいことはある。


それは、叶わないことだけど。


ずーっと窓を眺めていると、反射した私を見ている人と目が合った。

その人は、ニコリと笑いかけてくる。


…無視。
悪いけど話したくないから。

「なぁ、俺、笹原って言うんだけど、友達になんない?」

私は、首を横に振る。

「えー。残念だけど、もう話しかけたから、友達な!あと、俺軽音部に入るから!んで、ベースボーカル!応援しろよ?」


ボーカル…ね。頑張って下さい。
心の中で応援することしかできない。

だって…。

あなたは私にはできないことを持っているから。

どうやったって、できない。だけど、私は、したいのに。


ガタンッ

思いっ切り椅子の音を立てながら立ち上がる。


そのまま、先生に目で合図。


一応事情は話しておいてくれたから。
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